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特別コラム  北条聡子氏
<Profile>
東京都立芸術高等学校、武蔵野音楽大学を卒業後カナダへ留学し、オタワ大学、トロント音楽院で研鑚を積む。ビクトリア国際音楽祭、キワニス音楽祭などで数々の賞を受賞した他、1991年にカナダ国立劇場にて国営放送収録によるナショナル・デビューを果たした。 1995年に帰国後は、演奏活動の傍ら「あおば♪ピアノの部屋」を主宰し、生涯学習目的のピアノ教育に力を入れている。

音を楽しむ「音楽」のハズが「音が苦」に感じたことは、誰でも一度ぐらいはあるはず。その主な理由は、やはり『練習しなければならないこと』でしょうか?『練習』…それは、当然ながら、良い演奏をするためには避けては通れないもの。でも、その“良い演奏”の意味を少し勘違いしているかな?と思うような人が意外に多いのです。

「良い演奏」とは、どういうことでしょうか? 私は、よくこれをわかりやすく「朗読」に例えて説明しています。本=譜面、文字・単語=音符、文章=フレーズです。朗読するには、まず、言葉の発音やイントネーションを正しく読まなければなりません。読めない漢字、意味のわからない言葉があれば辞書で調べ、止まらずに読めるようにします。この段階が、音楽では「譜読み」です。そして、止まらずに読めるようになったら、今度は、聞いている人の心に響くように、感情を込め、表情をつけて読まなければいけません。場面によっては、声色や大きさに変化をつけたり、大袈裟に抑揚をつけたり、逆に淡々と読んだり、また一気にたたみ込むようなスピードで読んだり、たっぷり間をとって一瞬シーンと何も音のない時間を作ったり・・・。その匙加減が読み手の個性となり、同じ物語でも聞き手はまったく違った印象を受けることになるのです。スラスラと止まらずに読むことが出来ても、表情に乏しく一本調子であれば、聞き手は内容を理解できても、その物語に感動することはないでしょう。でも、時々つっかえたり、読み直したりすることがあったとしても、表情豊かに細部まで丁寧に気持ちをこめて読まれれば、人はいつの間にか話しに引き込まれ、共感し大きな満足感を得ます。

これと同じで、音符を間違わずに弾けること=「良い演奏」ということではないのですが、どうもこの段階で満足してしまう人が多いような気がします。もちろん、間違えずに弾けるに超したことはないけれど、それより大切なことは、「曲に対して自分なりのイメージをしっかり持って、それを表現すること」だと思うのです。ピアノに向かい、音符を追って指を動かしているだけが練習ではありません。楽譜には、音符以外にも作曲家からの様々なメッセージ(テンポ、強弱、アクセント、スタッカート、スラーなどの表示)が書き込まれています。楽譜とにらめっこして、どんな小さなメッセージも見逃さずに、自分なりのしっかりとした曲のイメージを組み立てていくことも、「良い演奏」へとつながる大切な練習のひとつです。そして、この練習の良いところは、真夜中でも電車の中でもお茶を飲みながらでも出来ること! 『楽譜を通して作曲者からのメッセージを読み解き、イマジネーションをふくらませて音で表現する』〜こんなふうに考えれば、時に「音が苦」となってしまうような練習も、少しは楽しくなるかもしれませんね。

<あおば♪ピアノの部屋>
神奈川県横浜市の田園都市線青葉台にある
大人の生徒さんを中心とした個人のピアノ教室です。